当ポータルサイトについて

当ポータルサイトは、医療の質向上のために医療の質指標の活用・推進を目的としています。


医療の質指標とは

医療の質指標とは、医療の質のある側面を数量的に表現し、医療の質向上に活かすための道具です。
以下に、医療の質指標についての考え方の1つを例示します。

医療の質とその評価方法

医療の質に関する社会の関心は高まり続けている。近年では厚生労働省による「医療の質の評価・公表等推進事業」やその他の自主的なプロジェクトにより、医療の質を多施設で評価し、それを公表しようという動きが活発化している。これらの背景には、長らく患者と医療関係者の信頼関係によって行われてきた医療が、様々な時代の変化の中で医療関係者が自らの医療を説明する責任が生まれてきたこと、また、医療の質は医療提供者だけの問題ではなく医療機関全体の問題としてとらえられるようになったことなどがあると考えられる。

医療の質とは人や場所によって様々な解釈があり得るが、「個人や集団を対象にした医療サービスが、どの程度望ましい健康水準を達成しているか、また、どの程度現在の専門的な知識に合致しているかを示しているもの」("the degree to which health care services for individuals and populations increase the likelihood of desired health outcomes and are consistent with current professional knowledge.")※1という定義がある。こうした医療の質を客観的に測定し、表現するため医療の質指標(別名クオリティインディケーター、以後QI)と呼ばれる道具が使われる。
医療の質を測定、表現するには様々な方法があるが、最も有名で世界中で使われているフレームワークとして1960年代にA.Donabedian※2によって提唱されたストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトカム(結果)の3つ視点から分析するものがある。ストラクチャーとは医療機関の構造や医療提供者のキャパシティに関するものであり、「1病床あたり医師数」や「紹介率」などが挙げられる。7対1や10体1などの入院基本料もこのストラクチャーの部分を評価したものである。プロセスとは医療機関において実際に提供された医療行為を直接評価するものであり、「急性心筋梗塞患者に対し入院後24時間以内のアスピリン投与率」「脳梗塞患者に対する早期リハビリテーション開始率」などが例として挙げられる。医療機関の日常診療自体を評価するものといえる。アウトカムとは医療提供の結果としての患者や地域住民の状態であり、死亡率や再入院率、患者満足度などがある。
言うまでもなく、医療機関の最終目標はアウトカムを向上させることである。しかし、アウトカムとなる死亡率や再入院率などの指標は医療機関の努力だけではなく、患者の重症度や地域の医療資源の量と医療機関に課せられた使命など、様々なものの影響を受けるものであり、得られた数字を解釈し、それを現場に役立てることは容易ではない。そこで、QIを医療機関の現場に役立てるためにはプロセス指標が多くの場面で有用であり、実際に使われている。



医療の質指標の目的

QIを用いると一見わかりやすい数字が得られる一方、QIの選択や取扱いを誤ると、意味のある結果を得られないばかりか、組織内でお互いに深刻な不信感をもってしまうことにも繋がりかねない。前述のようにQIはあくまで道具であり、その目的を達成するために適切な場で適切に使うことが重要である。

 QIは一般的には医療の質の改善、利害関係者への説明責任、研究を目的として算出される。諸外国では患者や保険者が契約する医療機関を選択したり、償還価格に反映させたりするのに使われることもあるが、日本では大部分が医療の質の改善や説明責任のために使われている。医療の質の改善を目的とするならば継続的に測定するための仕組み作りが必要とされ、また、説明責任を目的とするならば、一般の方々が知りたい内容を得られるようにする一方、突発的な反響で自分たちが多大な不利益を被ることがないようにQIの選択には細心の注意を払わなければならない。



医療の質指標の選択

QIに望まれる要件として3つあげられる。

まず、QI自体が重要であることである。QIは疾病の予防や事故の防止、あるいは利害関係者にとって重要でなければならない。また、対象の背景因子が結果に重要な影響を与える場合は層別化したQIの算出や分析が必要である。施設内でQIを用いる場合には、その指標の値が施設内だけで改善できるものである必要がある。
2点目として科学に妥当であることが必要である。そのQIに関係する根拠は明確にしておかなければならない。同時にそのQIがどういった分野や文脈で重要なのかも把握しておく必要がある。また、誰が測定しても同じ結果を再現することができ、その計測している内容が指標によって明らかにしようとしている目的に対して妥当でなければならない。
最後にQI算出には実現可能性がなければならない。指標算出のための分母と分子が明確であり、詳細な要件が定められる必要がある。また、それらの情報が取得可能であり、そのためのコストが指標算出によって得られる利益を越えてはならない。都度調査やカルテチェックは詳細な情報が得られるが、多大なコストがかかる一方、DPCデータはルーティンに作成される安価な情報源ではあるが、詳細な臨床情報は省かれている。出したいQIの重要度や負担可能な作業量のバランスを取りながら決めるべきである。

指標の妥当性 6つのキークエスチョン

  • その指標は医療の質指標としてどの程度強固な科学的根拠があるか。   
  • 分母に含まれる個人はすべて同様に分子に含まれる蓋然性をもっているか。   
  • その指標の結果は評価者のコントロールの及ぶ範囲内か。   
  • その指標はその指標が捉えようとしている課題を適切にとらえているか。   
  • その指標は医療機関や地域を公平に比較できるものか。   
  • その指標は指標の分母に含まれるべきでない患者に対しての除外基準を設けているか。


医療の質指標の運用と解釈

QIを実際の医療の質の改善に活かすには得られたQIの値を適切に解釈しなければならない。常に覚えていなければならないことは、QIで表現することのできる医療の質は全体の中のごく一部であることである。その上で、まずそのQIの値が大きくなるべきなのか、小さくなるべきかをはっきりさせ、価値判断の基準となる値を定める。水平的な比較がしたいならば施設間比較(図1)や診療科間比較を行い、継時的な比較がしたいならばベースラインを定めて複数回の測定を行う(図2)。その結果、値が基準値から大きく離れている場合には原因分析と対策を行う。原因がはっきり特定できない場合は、QIを各診療科別や月別に算出し、掘り下げを行う。QIの変動があまりに大きい場合や、基準値から説明がつかないほど離れている場合は、もう一度QIの妥当性をチェックする。


医療の質指標運用のキーポイント

QIを運用する際に最も重要なことは、目的を明確にし、組織全体の取組みとして推進することである。実際の改善活動に繋げるにはQI選択場面からの医療提供者の協力が不可欠である。また、医療機関では様々な場所に情報が分散しており、事務局だけの努力で得られる情報には限りがある。これらの障害を取り除くのは医療機関トップのリーダーシップであり、組織一丸となって取り組むことで初めてQIを医療の質を中心とした経営の為の道具として使うことができる。QIが今後の医療機関運営と医療の質の間で活用してくれることを望んでいる。

 

Copyright(c) 2013 Japan Council for Quality Health Care.All Rights Reserved.